身体が発揮できる「パワー」を高める事は、速く走ったり、遠くへ飛んだり、速いボールを投げたりする上で役立ちます。パワーを高めるための方法といえば筋力トレーニング(筋トレ)が一般的に知られているでしょう。とはいえ、過度な筋トレをする事で望まぬ結果を生む事がしばしばあります。
「筋肉には縮むしか能がない」これは、母校の恩師が言っていた言葉です。この言葉には深い意味があります。筋肉は自ら縮む事は可能でも、自ら伸びる事はできないという事です。したがって、筋肉は動きの中で適切に伸ばされる事がなければうまく働けません。
筋肉は基本的に骨に付着します。過度な筋トレを行うと、筋肉が有する張力のバランスが崩れ、骨の位置が正常から逸脱しやすいです。つまり、骨の位置がズレやすいです。正常な位置から逸脱した骨は本来の動きが妨げられます。骨が自由に動けなければ筋肉は適切に伸ばされません。その結果、筋肉は力をうまく発揮できません。過度な筋トレは骨の動きをしばしば制限します。筋肉は人の身体の動きに不可欠ですが、時には裏切る事があります。
では、身体が発揮できるパワーを効果的に高めるためには何が必要でしょうか?物理学においてパワーの大きさは、エネルギーを時間で割る事で求められます。つまり、パワーとは単位時間あたりに発揮できるエネルギー量の事です。例えば、バッティングの中でボールを打つ瞬間に大谷翔平選手が発揮しているパワーの大きさは、その瞬間に大谷翔平選手が発揮している力学的エネルギーの大きさにより決まります。
力学的エネルギーとは、位置エネルギーと運動エネルギーを足したものです。バッティングの場合、ボールを打つ瞬間にバッターが発揮している運動エネルギーの大きさが、パワーの大きさに強く影響を及ぼします。
運動エネルギーの大きさは、その公式から1/2×身体やバットの質量×身体やバットの速度の2乗である事が分かります。つまり、ある選手があるバットを使いバッティングの中で発揮できるパワーの大きさは、そのバットをどれだけ速い速度で振れるかによって決まります。それゆえ、仮に大きな筋力を有したとしても、身体の動きに制限があれば、パワーはうまく発揮できないという事です。

身体が発揮できるパワーを高めるためには、筋力を高めるだけでなく、身体が自由に動く事が大切です。車に例えるならば、エンジンの回転力を高めるだけでなく、車軸やギアの動きを滑らかにするなど、様々な構造に動きを良くする事が大切です。それゆえ、仮に筋力トレーニングをするならば、身体の動きを阻害しない様に行う事が大切です。そして、身体の中に潜む動きの制限を取り除く事により、身体が発揮できるパワーを効果的に高める事が可能になります。
前回のブログに続き、再び宣伝です。私の著書「身体の自己ケア法」では、身体の中に潜む動きの制限をどの様に認識し、どの様に取り除けば良いのかについての具体的な方法が書かれています。身体の中に潜む動きの制限を取り除く事は、身体が発揮できるパワーを効果的に高めるために有効です。興味がある方は是非ご覧ください。
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