良い動きとは何か?-22-【最終回】

「良い動きとは何か?」シリーズは、今日の記事が最終回です。今回は、これまで書いてきた事をまとめようと思います。まずは何度も出てきたこの図です。

動きの滑らかさとエネルギー効率

このシリーズで私は、動きの「滑らかさ」と「エネルギー効率」という観点を紹介しました。まずは、その内容を振り返ってみましょう。

このブログにおいて「滑らかな動き」とは、余分な抵抗の無い動きの事です。余分な抵抗とは、身体の内部で生じる物理的な抵抗の事です。余分な抵抗を引き起こす要因には、メカニカルストレス・過度な筋緊張・動きの制限などがあります。これらの中で、私は動きの制限を認識する事を重要視しています。なぜなら動きの制限は、様々な問題を引き起こす要因になるからです。動きの滑らかさを向上するには、動きの制限を取り除き、身体本来の動きを取り戻す事が大切です。

このブログにおいて「エネルギー効率の良い動き」とは、外力をうまく使った動きの事です。外力とは、地球の重力や床反力など、身体の外部から作用する力の事です。外力をうまく使った動きには、地球の重力による位置エネルギーが効率よく使われます。つまり、余分な筋活動によるATPのエネルギー消費を抑える事が可能になります。動きのエネルギー効率を向上するには、外力をうまく使う事が大切です。言い換えると、地球の重力をうまく使う事が大切です。

「良い動きとは、滑らかでエネルギー効率の良い動きの事である」、これは私の基本的な考えです。この考えを誰かに押しつけるつもりはありません。しかし、「滑らかさ」と「エネルギー効率」という観点は、身体の動きをみる上でとても役に立つと思います。

このシリーズの後半では、動きの評価法や身体の動きを良くするための具体的な方法を紹介しました。動きの評価は、主に視診と触診を用います。視診では、身体の外部から作用する力を感じる事で、動きのエネルギー効率を評価します。触診では、身体の内部で生じる力を感じる事で、動きの滑らかさを評価します。これらの評価方法を会得するには多少の修練が必要かもしれません。しかし、適切な修練を積む事で再現性を高める事が可能であると思います。その意味において、科学的な方法であると思います。

身体の動きを良くするための具体的な方法は、適切な身体の使い方・エクササイズ・専門家によるアプローチ(理学療法など)に大別されます。それぞれの方法にはコツがあります。しかし、リラックスする、身体全体を使う、腹部深層を意識する、丁寧に動く、共通する点は多いでしょう。

リハビリテーションの現場は、患者さんとセラピストの共同作業です。適切な身体の使い方やエクササイズを実施する事は患者さんの役割です。その一方で、専門職としてできる限りの事をするのはセラピストの役割です。

誤解を恐れずに言うならば、理学療法士の役割の中心は身体の動きを良くする事であろうと私は思います。理学療法士の職域が広がることは素晴らしいと思います。しかし、理学療法士としての独自性(identity)がどこにあるのか少し曖昧にも感じます。もし将来、私の息子が「パパ、理学療法士って何?」と聞いた際には、「リハビリをする人の事だよ」と答えるのではなく、「身体の動きを良くする人の事だよ」と私は答えたいと思います。

身体の動きを良くする事の目的とは何でしょうか?それは人により様々です。しかし、共通して言えるのは、その人の人生に貢献するという事であろうと思います。

人の身体には変える事が可能な要因もあれば、変える事が不可能な要因もあります。例えば、年齢や性別を変える事は不可能です。骨格の構造を変える事も難しいでしょう。しかし、身体の動きは変える事が可能な要因です。身体の動きを良くする事は、その人の人生にポジティブな影響を及ぼすと私は信じています。

「身体の動きを良くする事を通して、その人の人生に貢献する」

これが私の理学療法に対する理念です。

このシリーズは今回で終了です。次回のブログから、新しいカテゴリーの記事を書こうと思います。しかし、今回書いた「良い動きとは何か?」シリーズが、今後の記事の根幹になるでしょう。それでは、良いお年をお迎えください。また次回。

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