良い動きとは何か?-21-【感覚の使い方】

身体の動きに対する「感性」はとても重要です。なぜなら、感性なくして、自身が行っている姿勢や動作、エクササイズ、そして評価や治療が適切であるか否かの判断ができないからです。感性を磨くことは、多くの人にとってメリットがあると思います。そこで本日のブログテーマは「感覚の使い方」です。感性を磨くための方法をご紹介したいと思います。

感性とは、様々な感覚情報を認識する能力の事です。英語では”Sensitivity”と表現できるでしょう。人の身体には無数の感覚神経があり、多くの情報が脳へと伝達されています。とはいえ伝達された全ての情報を、脳が認識している訳ではありません。脳が認識する情報は全体のごく一部です。必要な情報をうまく認識するという事が、感性を磨くという事であろうと思います。

脳が認識する情報は、身体の外側から来る情報と内側から来る情報に分けられます。例えば、光や音は身体の外側から来る情報です。何かの香りや料理の味などもそうです。その一方で、肘はどれ位曲がっているのか、骨盤はどの様に動いているのかなどは身体の内側から来る情報です。筋肉の張りや痛みなども同様です。

このブログで重視しているのは、身体の内側から来る情報です。身体の内部には「固有受容器」と呼ばれる小さな器官が無数にあります。これが関節の位置や動きなど、様々な情報を脳に伝達しています。それをうまく認識する事で、どの様な姿勢や動作を実施しているのか、エクササイズの中で不適切なメカニカルストレスは生じていないかなどを判断する事が可能になります。また理学療法においては、身体のどこに動きの制限があるのか、治療はうまくいっているのかなどを判断する事が可能になります。

身体の動きに対する感性を高めるためには、身体全体に意識を向ける事が役に立つでしょう。我々セラピストは、身体の動きを学習する中で、知らず知らずと身体の様々な部位に意識を向けています。この様な機会を繰り返す中で、身体の内側から来る情報を認識する事が自然な事となっていきます。しかし、一般の方はその様な機会が少ないかと思います。一度自分自身の身体全体に意識を向けてみましょう。セラピストなら、患者さんの身体全体に意識を向けてみましょう。

身体の内側から来る情報をうまく認識するためには、頑張って探そうとせず、リラックスして受け取る様にしましょう。最初は「なんとなく感じる」でいいと思います。セラピストが姿勢や動作を観察する際も同様です。まずはぼんやりと姿勢や動作を眺めましょう。集中して観察するのはその次です。

人の感覚には個人差があります。敏感な人、鈍感な人、様々な人がいます。そして、人により認識する事が得意な感覚は異なります。自分が比較的容易に認識する事ができる感覚が1つあるといいでしょう。

具体的な感覚をいくつか紹介します。「重たさ」は比較的認識する事が容易な感覚だと思います。身体のどこが重たいのか?もしくは軽いのか?「張り」や「詰まり」も比較的認識しやすい感覚でしょう。身体のどこが張っているのか?身体のどこが詰まっているのか?このブログで何度も登場した「滑らかさ」も認識する事が可能な感覚です。滑らかさ・重たさ・張り・詰まり、これらの感覚は、身体の内部で生じる力の作用を反映します。何か1つ、自分が認識しやすい感覚を使いましょう。

人の感覚を他人と比べる事は難しいです。自分が感じる事を信じましょう。

感覚の使い方

  • 自分が認識しやすい感覚を使う
  • 身体全体に意識を広げる
  • リラックスして受け取る

あるヨガインストラクターが言っていました。ヨガとは「静かに自分を見つめなおす行い」であると。この定義は素晴らしいと思います。この定義に基づけば、ヨガの様々なポーズは、身体の内側から来る情報を認識しながら行う事が大切である、と理解できます。

ヨガに限らず、良かれと思って様々なエクササイズやスポーツをする中で、かえって身体を痛める人が多いと感じます。経験上、その様な人に共通する特徴は、自らの身体の内側から来る情報(痛みや違和感など)を無視したままエクササイズやスポーツを行っていると感じます。もう少し身体の内側から来る情報に耳を傾ければ、その様なリスクを減らす事が可能になるのではないでしょうか。

セラピストの場合、患者さんの身体の内側から来る情報を認識する事が、仕事の重要な部分になるでしょう。患者さんの身体固有の問題が何であるのか、本やインターネットには書かれていません。当然、このブログにも書いていません。視診や触診の中で感じる事により、それが何かを認識する事が可能になるのではないでしょうか。

身体の内側から来る情報は、飛行機に例えると計器からの信号です。長い人生、目的とする所にたどり着くためには、身体の内側から来る情報がとても役に立つでしょう。身体の内側から来る情報を受け取る能力、つまり身体の動きに対する感性はとても重要です。

次回のブログで「良い動きとは何か?」シリーズは終わりです。それでは、また次回。

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