良い動きとは何か?-10-【ヒストリー02】

前回からの続きです。身体の動きを良くする事が私の役割である、と思うに至った私ですが、そもそも「良い動きとは何か?」が分かっていませんでした。そこで私は、それを探究する事にしました。入職して4年が経過した2014年の春でした。

動きを形容する言葉には、様々なものがあります。例えば、私の憧れであるロジャー・フェデラーのテニスは「美しい」と言われます。これには多くの人が同意するでしょう。「美しい」は、動きの形容にも使われる言葉です。しかし、「良い動きとは美しい動きの事である」、これでは観る人の主観がとても強くなります。良い動きとは何かを表す言葉に客観性が必要でした。

私は動きに関与する様々な言葉を調べました。柔軟性、粘弾性、安定性、滑らかさ、しなやかさ、重たさ、ゆがみ、ひずみ、力、エネルギー、パワー・・。これらの言葉を用いて良い動きとは何かを示す事ができないか探究しました。しかし、私はある問題に直面します。

「良い動きとは、柔軟でバネがあり安定して滑らかでしなやかで軽くゆがみやひずみがなく力強くエネルギー効率がよくパワーのある動きの事である・・」、これでは訳が分からないのです。何をもって「良い動き」としてよいのか、私は迷子になりました。

私は、動きに関与する様々な言葉が、本質的にどの様な意味を持つのか調べました。その過程の中で私は、ある事に気づきました。それは、動きに関与する言葉の多くが「力」もしくは「エネルギー」という観点にたどり着く、という事です。例えば「柔軟性」という言葉は、力を加えた際の身体の動きの変化量を表します。柔軟性を高めるためには、身体の内部で生じる余分な抵抗(力)を取り除く事が大切です。「パワー」という言葉は、単位時間あたりにどれ位のエネルギーを使う事ができるのかを表します。パワーを高めるには、単位時間あたりにどれだけ大きなエネルギーを産出できるかが重要です。動きを力とエネルギーの観点でみる事は理にかなうだろう、と私は考える様になりました。

残された問題は、力とエネルギーという観点にどうやって「良い」という価値観をつけるのかです。そういえば、前回のブログで登場した神奈川の先生は「良い悪いじゃあないぞ!」とよく言っていました。この言葉、しっかり肝に銘じる必要があります。それでは、また次回。

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